【書評】日本のイノベーションのジレンマ

雑記

どうもkasakasaです。

企業の開発研究職として、サラリーマン人生を送っています。

30代となった今、「企業の研究員はどうあるべきか」「社会貢献出来るのだろうか」と自問自答することが極稀にあります。

極稀だと、チコちゃんに「ぼーっと生きてんじゃねえよ!」

って怒られそうだな。。。

で、そんな時は結構ビジネス本を読み漁ってモチベーションを維持しようとしたり、仕事をしていく上でのヒントにしようと試みることがあります。

今回は「日本のイノベーションのジレンマ」という本を読みましたので、自分の頭の整理も含めてレビューしたいと思います。

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「日本のイノベーションのジレンマ」とは

クレイトン・クリステンセン教授の「イノベーションのジレンマ」の監修である玉田俊平太氏が「破壊的イノベーション」の解説と、日本企業は昔、トランジスタラジオやサーマルインクジェットプリンタなど多くの破壊的イノベーションを起こしてきたにも関わらず、近年スマホ、テレビなどの家電製品でなぜ敗北してしまったのかを解説しています。

日本のイノベーションの歴史と最近の事例を紹介しながら、どうすれば日本企業が「破壊的イノベーション」を起こすことが出来るのか紹介しています。

なぜこの本を手にとったのか

この本を手にとった理由ですが、自分の研究分野に近い分野で興味深いスタートアップが出てきたというのが理由です。

ただ、客観的にみても新しい技術があるわけではないんですよね。

近年、クラウドファンディングで資金を調達し、新しいビジネスを始めるスタートアップが増えてきていて、面白い製品を提案すれば資金調達も昔に比べて容易になっていると思います。

そのような環境の中、

「なぜ大企業では出来ないことをベンチャーやスタートアップは簡単にやってくるのか」

「イノベーションの定義は研修で議題に上がるが、この本にヒントがあるのではないか」

と考え、この本を手にとることにしました。

サラリーマン研究開発職の感想

色々と書かれていますが、印象に残った5点は以下です。

イノベーションの定義

まずイノベーションの定義ですが、イギリスの有名な学者ハビットは「イノベーションとは、機会を新しいアイデアへと転換し、さらにそれらが広く用いられるようにするプロセスである」と定義してしています。

つまり、広く用いられないとそれはイノベーションではないわけです。

「イノベーション」と「インベンション」は違うわけですね。

企業で働く身である限り、ここは忘れては行けないポイントであると思います。

確かにシーズを探すような基礎研究はたくさんあるわけですが、じゃあその先にどういう製品になる可能性があって、どういうふうに社会貢献できるかというのは常に考える必要があるわけです。

会社を通して社会貢献をしてはじめて、イノベーションのイの字を語れるのではないかと感じました。

「持続的イノベーション」と「破壊的イノベーション」

大企業が得意なのは「持続的イノベーション」であり、「破壊的イノベーション」が不得意であると書かれています。

「持続的イノベーション」とは、ある既存製品の改良を繰り返し、性能を上げていくことです。これは既存顧客の満足度を高めたり、株主を代表するステークホルダーへ利益最大化への説明責任があるからです。

一方、「破壊的イノベーション」とは、既存市場を破壊して市場構造を変えてしまうことです。更にこの破壊的イノベーションは「新市場型破壊」と「ローエンド型破壊」に分けられます。

「新市場型破壊」は全く市場にないものを生み出して市場を破壊することで、例えば真空管ラジオに対するトランジスタラジオ、電報に対する電話などが挙げられます。

「ローエンド型破壊」は、既に市場にある製品が顧客要求性能を遥かに超えてしまっている場合、低コスト製品が顧客要望を超えた時に起こるイノベーションになります。代表的なのはT-fal のポットやテレビなどが挙げられます。

一般的な大企業に努めている身にとって、かなり痛感する内容です(大企業だけでなく、日本の多くの企業が該当すると思います)。

恐らく多くの大企業がシェア・売上を守るため、改良を重ねていくことにリソースを投じていますし、例え新しい可能性がある開発が出来たとしても市場に問うことなく無くなっていくものも多いのではないかと考えています。

これは合理的判断をした結果であるのと同時に、少しでも市場受け入れ性がない可能性があるとトライ出来ない背景があるように思います。

もちろん開発者としては、合理的判断をした上で市場を破壊できるようなセレンティビティを伴った「新市場破壊型」の開発を目指しています。ただそんな簡単なものではないですし、基礎検討に大きなリソースを割くことも難しい。

リスクを減らすための裏付けを固めることも必要ですが、リスクをとって挑戦出来る土台・環境づくりが必要かも知れません。

一方「ローエンド型破壊」については企業が大きければ大きい程好まない傾向にあるように思います。自分たちの技術、力を信じ、高付加価値製品を生み出すことを第一としていると思いますからね。社会を豊かにするというゴールに対する手段として高付加価値製品を生み出すことは間違ってはないのですが、「ローエンド型破壊」もそうなることを認識するべきだと思いますね。

ちなみに冒頭で記載した新しいスタートアップは「ローエンド型破壊」なわけですが、これが消費者の心を動かし、要求を満たすようなことがあれば、市場を変えてしまう可能性もあると思います。

これが本当に起きた時、今の会社で自分がどういう対応をするのか、考えていかないといけないのかも知れません。

メンタルモデルイノベーション

これは結構面白かったです。大塚製薬のポカリスエットが題材として挙げられています。

市場としては限定されてしまうような気がしますが、新しい用途・切り口を見つけて爆発的シェアを取るのも「イノベーション」と呼んでいいわけです。

企業買収について

企業買収についても書かれています。

買収後に失敗するケースは「企業戦略のすり合わせが出来ない」、「統合マネジメントの失敗」が挙げられています。買収企業は既存ビジネスの範疇なのか「破壊的イノベーション」を起こすためなのか、買収前に目的と買収後の戦略をしっかり立てて進める必要があるようです。

企業の中にいると担当層レベルまで話が明らかでないケースもありますが、戦略不足は「買収が目的」になりかねないと感じました。

無消費と無消費者

「新市場破壊型」を行う考え方で、何らかの制約で満足を得られていない状況・人のことを指します。制約は4つ挙げられていて、「スキル」「資産」「アクセス」「時間」を上げています。

これを軸に考え、顧客の潜在的ニーズを探ることが「破壊的イノベーション」を起こす上で重要な考え方であると書かれています。

商品開発に近い考え方であると思いますが、基礎研究からでもこの背景をしっかり述べることが出来ると、多くの仲間を引き込むことが出来ると考えています。

さいごに

大企業は、、、という書かれ方をしていますが、多くの日本企業が合理的に考えることで「破壊的イノベーション」を起こすことが難しいのではないかと考えています。

ではどのように「破壊的なアイデア」を起こすべきかが最後に書かれていますので是非読んでほしいと思います。

大事なのは「個の力と結束力」ですが、企業で働くとある一定方向に思考が傾きがちになると思います。そのような中、いかに個の力を出すことが出来るかが重要だと思いますし、最近はそういった人材の方が求められているとも感じます。

これを中堅からやるのは意外と難しいのはあるのですが、、、

ブログを通していろいろ読書・勉強しながら、「個の力」を高めて行かなければなりません。

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